理学療法士って辞める人が多いのはなんでだろう?
研究データと実体験をもとに解説するよ
理学療法士の離職率
まず、理学療法士の離職率を見てみましょう。
【領域別】理学療法士の平均離職率
- 医療領域
- 介護領域
はじめに理学療法士の勤務領域を上記2つに区分してそれぞれ離職率を調べたデータを見てみましょう。
医療領域の平均離職率
引用:第2回理学療法士・作業療法士需給分科|公益社団法人日本理学療法士協会
10.2%
介護領域の平均離職率
18.8 %
介護福祉領域では離職率が高い結果となった
このデータによると介護領域で働いている理学療法士の方が離職率が高いようです。
【分野別】理学療法士の平均離職率
もう少し細かいデータもあるよ
理学療法分野ごとに離職率はこちらのデータが参考になります。
- 高度急性期:6.8%
- 急性期:9.4%
- 回復期:10.7%
- 慢性期:12.6%
- 介護老人保健施設:20.5%
- 訪問リハビリ:37.4%
- 訪問看護:17.3%
- 通所リハ:19%
- 通所介護:19.6%
- 特別養護老人ホーム:9%
- そのほか:20%
分野別でみても、全体的に介護領域のほうが離職率が高そうですね。
分かりやすいように離職率が高い順に並びかえてみました。
離職率 | |
訪問リハ | 37.4% |
老健 | 20.5% |
通所介護 | 19.6% |
通所リハ | 19.0% |
訪問看護 | 17.3% |
慢性期 | 12.6% |
回復期 | 10.7% |
急性期 | 9.4% |
特養 | 9.0% |
高度急性期 | 6.8% |
介護領域の中で特別養護老人ホームは離職率が9.0%と唯一低い値になっています。
しかし、ワースト5を見ると訪問リハ・老健・通所介護・通所リハ・訪問看護と全て介護領域が占める結果になっています。
他職種との離職率の比較
次は他職種の離職率と比較してみよう
厚生労働省が職種別の離職率の統計データを公表しています。
このグラフを見ると、宿泊・飲食業が最も高くて26.9%、生活・娯楽系が23.9%、教育系が16.6%と続いているのが分かります。
ここで、さきほどの介護領域の離職率18.8%を当てはめてみると上から3番目の悪さなのが分かります。
他職種と比べても理学療法士の離職率は高いんだ
理学療法士の離職率が高い5つの理由
離職率が高い理由を考えてみよう
年収が低い
まず、はじめにあげられるのが年収の低さです。
理学療法士の平均年収は400万円ほどといわれています。日本人の平均年収は約660万円なので260万円も低い待遇です。
しかも、理学療法士は公務員のように年功序列で勤続年数に応じて年収がどんどん上がっていくわけではありません。
公務員よりも毎年の昇給額が少ないところがほとんどです。
理学療法士の職業に満足しているか調べた研究があるのですが、その研究によると、このような結果が出ています。
理学療法士の職業生活全体の満足度では満足傾向がみられ、「仕事に対するやりがい」「職場の人間関係・コミュニケーション」「雇用の安定性」「福利厚生」が高かったが、「賃金」については最も低い結果となった。
引用:作業療法士・理学療法士の職業生活満足度に影響を与える要因|理学療法科学
理学療法士の賃金に満足している人はかなり少ないといえるでしょう。
この待遇面の課題に疑問を感じた人は少しでも年収アップすることを期待して他施設への転職や、理学療法士をやめて全く別の仕事に就職する人も多いです。
僕が以前働いていた勤務先の後輩も入職して2年ぐらいで理学療法士をやめて不動産業界に転職していました。
同僚や養成校時代の友人などPTをやめた人は結構いるんじゃないかな?
勉強が辛い
理学療法士は一生勉強といわれる世界です。どんどん新たな知見が集積されてゴールドスタンダートも変わっていきます。
ゴールドスタンダードとは診断や評価の精度が高いものとして広く容認された手法のこと
そのため、全く勉強をしない理学療法士は時代遅れのサービスを提供することになってしまいます。
そういったことがないように職場の風潮としてスタッフが勉強しないといけない雰囲気が出ている職場もあります。
また、時間外で勉強会をしていて雰囲気的に参加しないといけない職場も少なくありません。
ちなみに、ぼくが最初に勤務していた病院は英語論文をパワーポイントに全文日本語訳を書き起こして発表する勉強会がありました。
今思えば、とてもいい経験になったと思っていますが、それでも半強制的な勉強会が合わずに仕事に対するモチベーションを保てなくなる人はいるのではないでしょうか。
人間関係がキツい
同僚や上司との関係に悩んで離職する人もいます。
人間関係の問題は理学療法士・作業療法士業界に限らず、どの業種でも起こりうることだと思います。
ほかにやりたいことがある
最後はポジティブな離職理由だと思います。
理学療法士以外にほんとにやりたいことがあって離職するのはいいことだと思います。
もやもやした気持ちのまま、理学療法士を続けるよりも一度しかない人生なので、チャレンジしたい分野があれば挑戦するのは全然ありだと思います。
離職を考えている理学療法士の方へ
ここまでの話をまとめると、理学療法士の離職理由は大まかに以下の3つに分類できます。
- 収入面に不満がある
- 人間関係に参っている
- 理学療法士の熱意・モチベーションがない
それぞれの考え方と対策をアドバイスするよ
1.収入面に不満がある
1つ目は理学療法士の業務は好きだけど、収入面に不安を感じていてこのまま今の職場で理学療法士を続けていいのかor理学療法士自体をやめたほうが悩んでいるという方です。
理学療法士自体が嫌いというわけでなければ、理学療法士を続けるべきだと思います。
ただし、医療費削減の国全体の強い時代のうねりがある中で、今の職場で大幅な年収アップはほぼ不可能です。
組織自体の運営部門(部長職など)に入閣すれば年収が跳ねる可能性はありますが、そのポストに就ける保証がある方なんてほぼ皆無なはずです。
従って、このような方が今日からするべきことは以下の2つです。
- 他施設へ転職して管理職での年収アップをねらう
- 副業で本業+副収入の合計での年収アップをねらう
ぼく自身、3年以上前から副業を開始して理学療法士とての本業以外の収入を得ています。
ぼくのメインの収入源はブログですが、それ以外の副業と合わせて月17万円まで稼いだ経験があります。
自身の経験をもとに理学療法士に強くおすすめする副業は以下の記事で紹介しています。興味ある方はぜひ参考にしてください。
2.人間関係に参っている
人間関係に参っている人はまず、その状況の原因がなんなのか冷静に分析してみましょう。
ぜひ、試してほしいのが「自責の念」です。
人間関係が悪化するとどうしても問題がおきたときに他人のせいにしてしまいがちです。
自責の念を持つと、意外に問題を発生させている原因が自分にあることに気づきます。
そうすると、少しづつ行動にも変化が生まれてスタッフとの関わりが変わって人間関係も修復されるかもしれません。
2つめのポイントとしては「他人に期待しない」ということです。人はどこか無意識的に「この人ならやってくれるだろう」と期待をしてしまいます。他人の行動がその期待値を超えなかったときには苛立ちを感じてしまいます。
最初から他人に期待していなければ、ミスや業務が滞っているのを見かけてもイライラせずに対応することができるようになります。
この2つの方法はぼくが重宝しているテクニックなので、ぜひ実践してみてください。
ただ、このような取り組みで解決するレベルではなく、全く自分に落ち度がないのに劣悪な人間関係に身を置いている人も少なからずいるはずです。
そういった方は一刻も早く転職しましょう。自分のことを第一に考えてください。理学療法士の業務自体が好きであれば、スパッと環境を変えてリスタートを切りましょう。
3.理学療法士の熱意・モチベーションがない
最後は理学療法士として働いてみて熱意・モチベーションがなくなった方です。
こういった方にまず最初に伝えたいことは
「自分を責める必要は一切ない」
ということです。
だれしも感情は不安定に揺れ動くものです。理学療法士として働いてみて
「一生この仕事を続けるのは難しい」
と思ったらそれは自分の心の素直な意思表示です。
中途半端に離職することはオススメしませんが、自問自答してどうしても理学療法士を続けれないと思うのなら、気持ちを切り替えて新しい道に進んでいきましょう。
どうすればいいのかスッキリしたよ
理学療法士の離職を俯瞰的に捉えよう
理学療法士の離職率は医療領域が10.2%だったのに対して介護領域では18.8%と他職種と比較しても高い割合を示しています。
この原因の1つは待遇面の悪さが挙げられます。医療費を削減しようとする国の政策風潮をみると、今後理学療法士の年収がアップする可能性は限りなく低いといえます。まず。この現実から目をそらさないようしましょう。理学療法士自体が好きだけど収入面で将来の生活が不安という方は自分で新たな収入源を創り出すことを始めましょう。
いきなり収益化することはできませんが、コツコツと種をまくことでいつの日か副収入という花が咲きます。